業界の常識に挑んだ技術開発の軌跡
2012年に当店は、TAILOR SECOND HOUSEを母体としたクリーニング店として設立しました。きっかけは「スーツは水洗いが難しい」という業界の常識への疑問です。服地を織る生産工程やスーツを仕立てる製造工程にも、ウールには水が不可欠な素材です。人も羊も哺乳類であり、ウール繊維は髪の毛と同じアミノ酸の結合によるタンパク質成分で構成されています。よって水で洗うことは優しく衛生的である反面、芯地や裏地などから構成するスーツ製品は、水洗いによる寄れや歪みを抑える技術が課題となります。
こうした研究開発を経て、許認可事業AQUA CLEANING SECOND HOUSEが誕生しました。クリーニングを通じて学んだ知見は、仕立ての職人としても新しい発見の連続でした。水洗いによって蘇るウールの毛並み、毛芯の種類や素材の組み合わせによる造形美、アイロンワークの工夫で変わる表情と立体感など、またお客様が諦めていた汚れにも染み抜き技術の裏には化学の知識や職人の経験、そして根気強さがあります。
染み抜きに込められた職人の経験と知識
あらかじめマーキングしていた箇所のシミや汚れに専用の機材を使い、噴射や蒸気など複数のアプローチを採案し、慎重に進めていきます。汗などの皮脂汚れは、刷毛でブラッシングしてドライ剤を馴染ませ根気よく追いかけるなど、経験と時間を要する繊細な作業が求められます。シミを落とすにも手順があり、ケチャップの汚れで言えば、まずは表面の油膜を剥がしてから、次に水溶性の汚れ、その後にタンニン系の汚れの除去と追いかけていきます。汚れの成分を層に分けて順番に除去する技術は、正に職人芸と言えます。
ドライクリーニングは、主に石油を原料とするドライ溶剤や、より揮発性の高いパークロロエチレンなどの有機溶剤を使用し洗う事により油汚れを溶かすクリーニング方法です。溶剤と洗剤を混ぜた液体の中でご依頼品を回転させ、不溶性の汚れを叩いて浮かしながら洗いを行います。その後、ハンガーに吊るし50℃前後の熱風で乾燥させると、溶剤が揮発して、同時に油汚れも落ちる仕組みです。また表面にある油性の汚れを除去することで、更に深く生地に染み込んだ汗などの水溶性の汚れにアプローチする準備が整います。
ビスポークの視点から見た地の目の重要性
最終工程は、手仕上げによるアイロンワークです。ジャケットは袖を裏返し、身返し含めて裏地から丁寧にシワを伸ばしご依頼品の状態を整えます。スラックスでも裏側の袋地や膝裏から始め、水洗いによって浮き上がる縫い代に熱と蒸気を与えながら、焦らず一歩ずつ進めていきます。アイロンワークで最も重要なのは地の目を整えること、かつパターンを把握し、芯地に沿わせ立体を成型することです。地の目とは、織物である服地の縦糸と横糸を指し、ビスポークをはじめとした洋服作りは、地の目を理解し尊重することが求められます。
当店のアイロンワークも同様の考えをもとに、立体かつ綺麗なドレープを目指して腕を振るいます。メンズドレス製品がお好きな方にとって、クリーニング店選びはとてもセンシティブな問題だと感じております。私たちも一人の洋服好きとして同様の考えです。当店と一緒に洗いを担当する職人たちも同様の思いです。だからこそ、テーラリングで学んできた洋服作りの技術をクリーニングに落とし込み、スーツ仕立て品専門のクリーニング店を2012年に設立しました。
末長い愛用を支える総合的なメンテナンス
ご納品の際は、ご依頼品の状態がどうであったのかご報告すると同時に、着用頻度などアドバイスもお伝えしております。大切なお洋服を末長くご愛用頂くための一助になれば幸いです。お直しや保管など含めメンテナンスも気軽にご利用下さい。母体となるTAILOR SECOND HOUSEの技術と知識でテーラリングを駆使したお直しをご提供しており、厚みのあるハンガーなどクローゼットの場所を使うテーラード品ならではのお悩みをお持ちの方は、ぜひ保管サービスをご利用頂きメンテナンスまでお任せください。
当店における水洗いクリーニングが業界最高峰かは分かりませんが、一人の洋服好きとして、メンズドレス愛好家の皆様のご期待に応えるサービスだと感じております。テーラード製品のクリーニングでお困りの方や、お直しや保管などメンテナンスにおいてもお力になれれば幸いです。「購入したあの頃をもう一度」この一点に向けて、今後も精進してまいります。東京都中央区日本橋大伝馬町12-20 KKビル2階に位置し、月・木・金は12:00〜21:00、土・日・祝は10:00〜19:00の営業時間で対応しております。


